マンハッタン・ジャズ・クインテット・トリビア・コラム[6]
〜マイルス・デイビス、ギル・エヴァンスの歴史的名演をルー・ソロフが再演〜
ルー・ソロフは、ギル・エヴァンス・オーケストラに1966年に参加、88年巨匠ギル・エヴァンスがなくなるまでギルの元で活躍する。ルー・ソロフのファースト・アルバムには、ギル・エヴァンスがサイドマンとして参加した。ギル・エヴァンス亡き後も、ルーは、ギルの曲をアルバムに積極的に取り入れて強い結びつきを感じさせた。
ガーシュインの名作オペラ「ポーギー&ベス」にマイルス・デイビスをフィーチャーしギル・エヴァンスが編曲した歴史的名演は1958年に録音された。その後ミュージック・スコアの一部が散逸、長い間再演することが出来なかったが、近年そのスコアが発見され大きな話題となった。
ルー・ソロフは、ドラムスのアダム・ナスバムとともに、スウェーデンを代表するビッグ・バンド、ボーヒュースレン・ビッグ・バンドに迎えられておこなったコンサートでこの「ポーギー&ベス」を再演した。
このライブの模様は、DVD化され、優れた音質とルー・ソロフをはじめとしたミュージシャンの迫力ある演奏がギルとマイルスの名作を忠実に現代に蘇らせた傑作になった。「ついにルー・ソロフの決定版が出た!しかも動く。本気のルー、本物のルー、いつもの余裕満々ポーカー・フェイスではなく、ブチ切れて壮絶なルー・ソロフを観たい!」(ライナー・ノーツ)
「ポーギー&ベス」のうち4曲のみは、マイルスが世を去る2ヶ月前の1991年7月、モントルー・ジャズ祭のステージで、クインシー・ジョーンズの監修のもとに何とか再演がおこなわれたのだったが、あらためて全スコアがまとめられたのは90年代も終わりになってのことだった。
オリジナル・レコーディングがおこなわれてから40数年あまり。ようやく楽譜が揃えられて、ふたたびマイルス・デイビス、ギル・エヴァンスの音楽が、ルー達によって、われわれの前に姿を現わしたわけだ。ルー・ソロフとボーヒュースレン・ビッグ・バンドによる演奏は、単なるジャズの古典の再現ではなく、この素晴らしいジャズの遺産を永遠に伝えてゆくという、大きな意味をもったものであるに違いない。
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