スティングを聴きに武道館へ行ってきました。
ロックバンド「ポリス」で絶大な人気を誇り、その後も活躍の場を広げているスティングは、
現在、クラシックの名門レーベル、ドイツ・グラモフォンと契約し4枚もリリースしています。
今回は、過去の自分のヒット曲にクラシックアレンジを施した「シンフォニシティ」ツアーとしての公演です。
彼の代表曲「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」で印象的なサックスを吹いているのは
著名なジャズ・ミュージシャンのウィントン・マルサリスですし、ほかにも、クリス・ボッティ
やマヌ・カッチェなど、彼の周辺には良いジャズミュージシャンが集まっているという印象は
元々ありました。
しかし、クラシックにこんなに深くアプローチしていたと今回初めて知り、興味を持ち行くことにしました。
まず、スティングの歌のうまいことうまいこと。
感動的なうまさで驚嘆しました。
声がぶれず安定していて高音部も伸びやかで圧倒的なあの声量はとても今年で還暦の人とは思えません。
それに、物語を読む“ストーリーテーラー”になる時のスティングの懐の深さは生のコンサートでこそ感じられます。
映像が目に浮かぶ星や麦畑などの風景描写 、夜の職業の女性の独り言のような心情吐露、
森を疾走するキツネ、結婚したがだんだんとすれ違ってゆく男女の機微。
嬉しいとか悲しいとか「自分の感情を歌うこと」と「物語を読むこと」って同じようで違います。
一歩ひいて、俯瞰しながら、登場人物の心情に寄り添いながら、時にその人格になりきりながら、
彼は実に自然に描写し観客を物語の中に引き入れるのです。
スティングはきっと今までつらいこと悲しいこといっぱい乗り越えてきて今ここに立っているん
だろう、でなきゃこんな説得力たっぷりな描写なんてできないよなぁと、聴きながら人間としてのスティングにも思いを馳せました。
充実の歌唱力とこの表現力はさすがです。
肝心の「オーケストラとロックの共演」というのも全く違和感がなく魅了されました。
スティングにとってはそんな大げさなものではなく、年齢とともに表現方法も変わってきただけ、
そんな程度のことだったのかもしれません。
ずっとロックンロールし続けるアーティストもいればスティングみたいなアーティストもいる。
それって当然なことですね。
どちらでもその人らしくあればいいのだと思います。
最近はジャズやクラシックのコンサートばかりだったのでいいリフレッシュにもなりました。
さて次は何のコンサートに行こうか・・・・・