ハーモニージャパン・コンサートレポート » 2010 » 8 月 » 06
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コンサートレポート

2010 年 8 月 6 日 桂米朝さんのこと

「コンサートから演劇などなど、ぜーんぶひっくるめて。
今まで実際に生で観たり聴いたりしたもの中で一番感動したのは何か?」

もしそう問われたら皆さんは何と答えますか?
私は、

「学生時代に札幌・道新ホールで観た桂米朝の落語」

と答えるかもしれません。

桂米朝さん。
皆さんご存知でしょうか。
音楽でなくて恐縮ですが、今日は大好きな米朝さんについて少し書かせていただ
こうと思います。
米朝さんは上方落語を復興させた方で、落語界から2人目の人間国宝、
2009年には演芸界初の文化勲章受章者になっている方です。

落語のことなんて何にも知らないですが、このお方だけは大好きです。
あの時軽い気持ちで「この人、人間国宝なの?じゃあ一応観ておこっかな」と
チケットを買ってみて本当によかったと今では思います。
あの時、米朝さんは舞台にいるだけですごい「オーラ」でした。
派手な衣装もなければ豪華な舞台セットもない、無の空間に座布団だけ、
ごまかしのきかない厳しい空間にひとり正座して大勢の観客と真っ正面に対峙
している米朝さんは実に美しく衝撃的でした。
ああいうものを見てしまうと、世の中で言う「美男」とか「美女」とか見た目の
容姿の美しさなんてどうでもよいと思えます。
(私も少しでも米朝さんみたいな美しさが持てたなら・・・・)

米朝さんを取り上げたテレビや本の中でたびたび出てくるエピソードで、
米朝さんは若かりし頃、お師匠さんから
「ただ一生懸命に芸を磨け。ねうちなどは世間が決めてくれるのだから」
といった趣旨のことを言われたそうです。
私が思うに、米朝さんの芸におごりたかぶりが一切感じられないのはきっとこの
せりふが象徴しています。
日々生活していると、「俺/私はすごい人間なんだ!!」とふんぞり返った態度
の人が多くないでしょうか。
けれどそんな世の中に、自分の価値やら自己顕示欲でなく純粋にただ芸を極めん
とする人がいるのです。
もう感動するしかありません。


画像は米朝さんが生きた時代の仲間たちのことを語った本です。

藝、これ一生 米朝よもやま噺
桂 米朝(語り), 市川 寿憲(聞き手)
米朝さんに負けず劣らない素晴らしい芸人がたくさん登場しています。
読んでいてドキッとしたのがこのふたつ。
(下記正確ではありません。思い出して書いています)

一つ目は人形浄瑠璃の人間国宝の方が若い人たちに言った言葉。
「お客さんが拍手をしてもいい気になるな。やっと終ったと喜んで拍手している
のかもしれないのだから」

二つ目は米朝さんが大きなホールで公演したときのこと。
「こっちは演出として声を低くして話してるのに音響係は気を利かせてマイクの
ヴォリュームを上げてしまった。自分ひとりだけでなく皆が噺の内容を理解して
いなくてはならない。音響は特に気を使う。気を使わなくては“声”がただの
“音”になってしまう」

このふたつ、ジャンルを問わずエンターテイメント全般に通じることではないの
でしょうか。

芸術とは何か、美とは何か。文化とは何か。
私はぼーっと考えることがあります。
答えがでない難問です。
けれど、米朝さんみたいなお方がこの世にいるということ。
私にとってこんなに心強いことはないのです。

米朝さん、いつまでもお元気で!!

投稿:K.T. | カテゴリー: スタッフブログ |
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